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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)854号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山本敏雄の上告理由第一点について。

所論前段は、原審が適法にした事実の認定を争うに過ぎないものであつて適法な上告理由とならない。所論後段は、五万二千円の債権額の数倍の市価を有する物件につきなされた本件代物弁済の予約は、公平の原則に反し且つ権利の濫用であつて無効であると主張するのである。しかし上告人は第一、二審を通じ本件物件の右予約当時の時価は六、七万円であつたと主張して来たことは記録上明らかであるから、所論は右主張に反する事実を前提としての立論であつて到底採用できない。

同第二点について。

所論は要するに、本件代物弁済の予約が完結実行された昭和二二年一〇月当時の本件担保物件の価値は、債権額の十数倍に達していたものであること等から見て、被上告人の本件予約の完結権の行使は信義公平の原則に反し無効であると主張するのである。しかし原審の認定した本件事実関係の下においては、被上告人のした本件代物弁済の予約の完結権の行使が信義公平の観念に反するものとは到底認められないから所論は採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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